漢方治療エピソード

70代女性の患者さん
症状・お悩み
高血圧 眩暈 耳鳴り ぼーっとする 眠気がある だるい 便秘
治療の流れ
この患者さんの娘さんがもともとなかたにクリニックに通っており、娘さんの紹介で来てくれました。それからは、めまいや耳鳴りなどの症状に対して漢方による治療を進めていました。
これはその患者さんがコロナに罹患した時のお話です。熱はないけど倦怠感があったため漢方の「補中益気湯」を処方しました。倦怠感がおさまった後、「血圧が上がったり眠気が出たりするからなんとかしてほしい」とやや興奮気味におっしゃるので血圧のお薬を処方しました。しかしその後も血圧が高くなったり低くなったりはおさまらず…
この時私が感じていたのは、この患者さんは周囲の事に意識が行きがちなところがあるということです。自身がコロナにかかったことの不安に加え、家族など周りの人たちへの心配などもあり、気が立っているように見えました。そこで正直に「他人の話に首を突っ込みすぎではありませんか?周りのことを気にするよりも、まずは自分の足元を見て落ち着いてください。今の状態でお薬を出しても意味がないので、お薬は飲まずに様子をみましょう。」とお伝えしました。
約1か月後
表情をみると別人のようにすっきりとしているのが見てわかりました。患者さん曰く、「先生に言われたことが衝撃だった」「周りとの折り合いも良くなって楽になった」とのことで、体調的にも精神的にも落ち着いたようでした。
今でも漢方を少量処方していますが、これは「お守り」のようなもので、習慣的に薬を飲まなくてもよい状態になりました。
医師から一言
「自分を変えれば周りも変わる」ということを改めて実感したエピソードでした。他人のことを気にしたりまだ起こっていない未来に怯えたりすることで、自分自身を追い込んでしまう方が多くいます。これでは体調不良を自ら招いているようなものです。患者さん自身がこのことに気が付くことが回復へ向かうきっかけになります。

20代男性の患者さん
症状・お悩み
発熱 頭痛 咽頭痛 倦怠感、39度の熱 コロナの疑い
治療の流れ
初診日(夜診)
高熱が出ていたのでなかたにクリニックで検査をしたところ、新型コロナウイルス感染症の陽性が認められました。この患者さんは20代と若い方で、高熱のわりに汗があまり出ていなかったので、発汗療法をすることにしました。発汗療法とは免疫力を高めるために発汗を促す治療方法のことです。
(発熱・発汗は免疫力を高めようとする身体の反応です。高熱が出たときはよく解熱剤をつかうイメージがあるかもしれませんが、場合によっては逆効果になることがあります。)
発汗を促すために「大青竜湯」を処方し、2~3時間おきに飲むよう指示しました。
1日目(翌日)
朝に電話で体調を伺うと、もう熱は36.8℃まで下がってだいぶ楽な状態になっていました。喉の痛みがあるとのことだったので「小柴胡湯加桔梗石膏」を処方しました。
3日目
喉の痛みと微熱、関節痛に効く「桂麻各半湯」を処方しました。
4日目
症状はかなり落ち着いており、喉の痛みと倦怠感がまだ残っていたので、「補中益気湯」と「桔梗石膏」の漢方を処方しました。
漢方を服用するのが初めてだった患者さんでしたが、おかげさんで楽になりましたと感謝の言葉をいただきました。
医師から一言
症状が同じ患者さんであっても年齢や体力を考慮した結果、違う漢方を処方することがあります。また、治療経過によって漢方を変えることもあります。

40代女性の患者さん
症状・お悩み
喉が詰まる、息苦しさ、どの病院に行けばいいかわからない
治療の流れ
「喉が詰まる、息苦しさ」という症状に対して、どこの病院に行けばいいのかわからず、耳鼻科や内科など複数の病院を転々としていたようです。病院で診てもらっても一時的に症状が良くなったり悪くなったりの繰り返しで、病院に対し疑心暗鬼になっていました。もしかしたら食道ガンなど大きな病気なのかもしれないという不安もあり、人に勧められてなかたにクリニックに来院。
この患者様さんを見たとき、東洋医学的な病態である「気鬱」の症状だと推察しました。「気鬱」とは気(エネルギー)が体内をスムーズに巡らずに滞ることで様々な不調が現れる病態です。その主な原因はストレスだと言われています。
患者さんへのヒアリングを進めていくと、最近離婚裁判で悩んでいることが判明しました。裁判や仕事、これから先の人生に対する不安などのストレスを抱えており、そのストレスが「気鬱」の症状につながっていました。
患者さんは病名と原因がわかったことで安心した表情になり、「半夏厚朴湯」と「桂枝加竜骨牡蛎湯」の漢方を処方してからはみるみる顔色が良くなっていきました。
医師から一言
患者さんの明るい表情と、「どこにいっても良くならなかった症状が、おかげさまで楽になりました」とお言葉をいただけたことが強く印象に残っています。

50代女性の患者さん
症状・お悩み
眩暈で起きれない 吐き気 動悸 しんどい 食欲不振 立ってるのがつらい
治療の流れ
この患者さんは不安になりがちな方で、実際にさまざまな辛い症状が起こります。そのたびになかたにクリニックに相談に来てくださり、長くお付き合いさせていただいています。
2019年7月初診
主訴は眩暈で起きられない、吐き気や動悸がある、しんどい、食欲不振、立ってるのがつらいということで「苓桂朮甘湯」と「補中益気湯」を処方しました。すると一週間後には眩暈がなくなり食欲も回復しました。以降、症状や心身の状態に応じて都度漢方を変えています。
2019年8月
月経過多と重い月経痛、生理前の肩こりや頭痛、気力がわかないというご相談をいただきました。この時は「女神散」と「四物湯」を処方したところ1か月後には回復しました。
2019年11月
もともと動脈瘤があったのですが、それが今になって不安でしょうがないおっしゃるので、不安定な精神を落ち着かせるため「桂枝加竜骨牡蛎湯」を処方しました。
2020年3月
仕事のことなど色々考えて眠れないとのことで「抑肝散」を処方しました。寝る前に飲むよう指示したところ、よく寝られて楽になったとのことでした。
2020年6月
夜中の2・3時に起きてしまうとのことだったので、睡眠の質をよくするために「酸棗仁湯」と「コウジン末」を処方したところ、症状が改善されました。
2021年9月
娘さんがコロナにかかり自分は濃厚接触者になったことで、不安でうつっぽくなってしまったと相談がありました。この時は本人の希望で精神安定剤を処方しました。
2021年12月
普通の頭痛と天気頭痛の症状が出たので「呉茱萸湯」を朝晩、「五苓散」を昼に飲むよう指示しました。
2022年4月
職場が変わってから、眩暈がする、喉が詰まるということでした。東洋医学的な病態である「気逆」と「気鬱」を起こしてると判断しました。今回は薬もガラッと変え、「苓桂朮甘湯」「茯苓飲合半夏厚朴湯」「酸棗仁湯」を処方しました。一週間後に来院した際は、眩暈もおさまって寝られるし、肩こりも取れてすっかり治ったとのことでした。
なかたにクリニックに来る前は精神安定剤や吐き気止め、眩暈止めの薬を服用していました。今ではそういった西洋薬ほとんど使わず、その時々の心身の状態に合った漢方薬を服用しています。
医師から一言
患者さんが言われたことに返答して改善、を繰り返してきました。何度もコミュニケーションのキャッチボールをしてきたことで、患者さんのことを把握することでき、信頼関係が築けています。

60代女性の患者さん
症状・お悩み
メニエール 眩暈 不眠症 胃炎 頭痛 天気頭痛 血圧を測るのもこわい 落ち着きがない 違う病院でMRIを撮ってから閉所恐怖症
治療の流れ
前にかかっていた病院が閉院になったのをキッカケに、ホームページを見てなかたにクリニックに来院。
初診
他院でめまい、不眠症、閉所恐怖症、不安神経症で精神安定剤を内服していた患者さん。
この患者さんで気になったのは、診察を受けている間もそわそわと落ち着かないその様子でした。血圧を測ることすら怖いという方で、些細なことにも不安や恐怖を感じているような状態でした。家でも気が落ち着かないとのことで、ご家族の方も困っていました。
漢方は「苓桂朮甘湯」「桂枝加竜骨牡蛎湯」を処方しました。2週間後、頭が軽くなり精神科の薬も1/3に減量できました。まだ天気頭痛が残っており血圧も高めだったので、降圧剤を出したところ、徐々に血圧も落ち着き天気頭痛も消えていきました。
約1年後
動悸がみぞおちのあたりから聞こえるとのことで来院してくれました。精神的にショックな出来事があってから調子がよくないということだったので、「半夏厚朴湯」を追加したところ症状が落ち着きました。
約4か月後
動悸がまたでてきたとのことで、「苓桂朮甘湯」を「加味逍遙散湯」に変更しました。1週間後には症状が落ち着きました。
もともと動悸や眩暈で散歩にも出られないような状態だったのが、今ではほぼ安定しています。また、精神が安定してきたことで本人も自信を持つようになり、何かトラブルが起きても大きく動じなくなりました。ご家族の方々にも喜んでもらえたようで、安心したとおっしゃってました。これからの課題は漢方薬の量を減らしていくことです。
医師から一言
昔は向精神薬を服用していたのですがうまくいっていなかったようです。今では、前のソワソワ感がなくなって余裕があります。これにはご家族の方も大変喜んでくれました。西洋薬でコントロールできなかったものが、ここまで漢方薬でコントロールできたことに驚きましたし、よくなって本当によかったと思っています。

10代女性の患者さん
症状・お悩み
学校にいくと座ってても立っててもフワフワする 全身が震える
治療の流れ
この患者さんのお母さんがもともとなかたにクリニックに通っており、お母さんが付き添って親子で来てくれました。
この患者さんは中学3年生の時に起立性調節障害と診断を受けおり、またいわゆる夜型人間でした。東洋医学では「フクロウ型人間」と呼んでいます。フクロウ型人間とは、夜になったら元気になり、朝早くに起きられない体質の人のことです。学生さんの場合だと、本人は登校したいと思っているのに寝起きが悪く、そのことで親や周囲の人から責められて不登校になる人が多くみられます。
このフクロウ型人間になるきっかけとして、過去に追突事故にあったことがあげられます。そういったことはなかったか患者さんに聞いたところ、小さい頃に追突事故の被害にあったことがあるとのことでした。
過去に事故にあっているということを確認したので、打撲や骨折があるときに使われる「治打撲一方」という漢方と「苓桂朮甘湯」を処方しました。
フクロウ型人間がなおり、患者さんも自信をとりもどして学校にも行けるようになりました。
医師から一言
なぜ事故にあったことがわかったの?と患者さん親子に驚かれたのは印象に残っています。フクロウ型人間になるきっかけとして追突事故があるという考えは東洋医学の知識に基づいています。
なのでこの患者さんはすぐ治せるとおもっていましたし、実際すぐ治ったのですごくうれしかったですね。

60代女性の患者さん
症状・お悩み
象のように脚がパンパンにむくんでしまっている どこいっても治らない
治療の流れ
子宮頸がんの手術をしたあとの放射線治療が原因で、脚が象のようにパンパンにむくんでしまっていました。どの病院に行っても治らないとサジを投げられて困っていたところ、なかたにクリニックのホームページに「むくみにも対応している」と書かれているのを見てなかたにクリニックに来院してくれました。脚のむくみに有効な漢方は何種類かあるのですが、まず最初に「防已黄耆湯」を処方しました。これがすぐ効いてくれました。
パンパンだった脚が2週間でほっそりした元の脚に治りました。
医師から一言
ここまで目に見えて回復したことに私も驚きました。

70代女性の患者さん
症状・お悩み
リウマチ 手足・膝・関節・足腰が痛い 歩くのもままならない 字も書けない
治療の流れ
2018年10月
この患者さんは別で通っている整形外科でリウマチの治療していたがよくならなかったようです。知り合いから、なかたにクリニックの漢方が効いたというクチコミをきいて、高石市から2時間かけて、なかたにクリニックに来てくれました。
右手中指と足、背に腫れがありました。別で通っている整形外科では、痛み止め、セレコックス、リウマトレックスが処方されていました。リリカは副作用がでて飲めなかったので、整形外科的なコントロールができませんでした。鍼灸を受けて多少よくなっていました。
漢方は「十全大補湯」と「大防風湯」を処方したところ、2週間後には劇的に治っていました。しかしまだ少し右手中指に症状が残っていたので「防已黄耆湯」を処方したところ、それからコントロールできるようになっていきました。
2020年5月
骨折したから通院できなくなるとのことで、それから約2か月ほど漢方を服用しない期間が続きました。
2020年11月に久しぶりに来院
漢方を服用しないことで症状が再燃していました。
初診時のリウマチ症状が再燃し左の膝の内側が熱と痛みがあったため、「防已黄耆湯」と「越婢加朮湯」と「治打撲一方」を処方しました。
2020年12月
むくみと痛みが取れました。でも膝がまだ少し痛みがあるということで「桂芍知母湯」を処方しました。
2021年1月
膝の内側に熱と痛みがあるということで、「防已黄耆湯」と「越婢加朮湯」と「治打撲一方」を処方しました。
2021年2月
膝が完全によくなりました。リウマチ治療に移り、漢方の「十全大補湯」「大防風湯」「防已黄耆湯」の処方を再開したところすぐ改善しました。
初診時は歩くのもままならないほど痛かったのが、階段を登れるほど回復しました。小学生の見守りが一番の楽しみでそれに行けるようになって非常に喜んでいました。また、別で通っている整形外科の先生が「どうして治ったんだ?」と不思議がっていたそうです。
医師から一言
私は先人たちが積み重ねてきた医学の知識を常日頃勉強しています。リウマチの治療もやり方があるので、今まで先人たちが蓄積してきた知識をもとに、治療方法を選んでいます。

40代女性の患者さん
症状・お悩み
帯状疱疹後の痛みがつづく、下腹部痛、胃腸のむかつきなどの不調、吐き気、下痢
治療の流れ
帯状疱疹は抗ウイルス剤を出して治療を終了することが多いのですが、帯状疱疹後の神経痛で鎮痛剤が必要なことがあります。この患者さんは他院で処方された鎮痛剤や市販薬を飲んでも痛みがおさまらないということで、なかたにクリニックのホームページを見て来院。
2021年11月
帯状疱疹を発症
2022年1月中旬
帯状疱疹後の痛みに加え、胃腸の不調と下腹部痛がなおらないということでした。
2022年3月12日
帯状疱疹後神経痛と、東洋医学でいうところの「肝鬱」と診断しました。肝鬱とはストレスが体にたまっている状態の事をいいます。採血など一般的な検査をしたうえで、「加味逍遙散」と「香蘇散」を処方しました。
3月25日
帯状疱疹後神経痛と下腹部痛はだいぶおさまり、胃のむかつきは数日おきぐらいの頻度になっていました。調子がよくなってきていることを確認したので、「四物湯」を追加しました。
4月8日
先週遠出をしたことによる疲れや、家族との衝突があり、気持ちに余裕がないとのことでした。体が弱っていると判断したので、「コウジン末」を追加しました。
4月22日
全体的に快方に向かっているけど、日によって疲れがあるということだったので、「四物湯」を「補中益気湯」に変えました。
5月13日
もうほぼ回復して元気になりました
医師から一言
諸症状が起こるに至った原因はなにか、お話を聞いたところ次のような経過を把握しました。
ご家族とのトラブルがありストレスがたまっていた→ストレスが溜まると免疫力が下がるので帯状疱疹になった→ストレスが継続して肝鬱の状態になった→帯状疱疹後神経痛が治らない上に、胃腸の不調をなどその他の症状も出てきた
このように、なかたにクリニックでは「なぜこのような症状が出るようになったのか?」という根本的な原因を把握し、そこから改善していく治療を考えていきます。

70代男性の患者さん
症状・お悩み
心臓がどきどきする(不整脈)、疑心暗鬼で不安にとらわれる、薬を飲むのが怖い
治療の流れ
不整脈を治すために他院で心電図をとったけど異常はないということでした。救心と安定剤を飲み続けているが治らないため、なかたにクリックに来院。
2019年1月初診
心臓がどきどきする症状が不安なので治してほしいということでした。患者さんの状態から、心因性の期外収縮だと診断し、漢方は64番「炙甘草湯」を処方しました。
二週間後
不整脈の症状はすっかりなくなりました。
しかしその後、通院の間隔が何か月も空くようになりました。どうやら薬を服用することに不安があり、患者さん自身の判断で服用量・服用回数を減らしているようで、「薬が残っているからクリニックに行かない」といった状況でした。
2019年8月
そんな状況に対して、「これまでは、心臓の不整脈を治す治療を進めてきましたが、これからは不安になりがちなその心の治療をしてみませんか?」と提案しました。この時に出したお薬が137番「加味帰脾湯」です。この漢方を服用するようになってから、患者さんの表情が明るくなり、気持ちが楽になったと言っていました。
不整脈も治り、気持ちも前向きになりました。今では、患者さんが服用できる薬の量を相談したうえで、1か月ごとの通院を続けています。
医師から一言
西洋医学の観点からだと、期外収縮の症状が重たい人にはβブロッカーという薬を処方します。この薬は副作用が起こる可能性もあるため、症状が軽度の場合は処方せず、様子見で終わるが多いです。
しかし患者さんからしてみれば、症状があるのに何もしてもらえないと不安になりますよね。実際にこの患者さんは何に対してもネガティブにとらえてしまう状態に陥っていました。薬を飲むのも不安だというので、これでは治療が進みません。
なので、心の治療をすることで不安を抑え、結果的に不整脈の治療も進みました。

50代男性の患者さん
症状・お悩み
不眠、突発的な呼吸困難・呼吸苦・ひどい眩暈
治療の流れ
昨日急に呼吸困難とひどい眩暈があり、救急病院を受診したということでした。ですが脳のMRIをとっても全く問題ないと言われ、もしかしたら耳に異常があるかもしれないかもということで奥さんと一緒になかたにクリニック来院。
2022年5月
患者さんの状態から、東洋医学の「奔豚気」(西洋医学では「パニック」)だと診断しました。
「奔豚気」は、ストレスのキャパシティが超えてしまったときに起こります。最近ストレスを感じるようなできごとはなかったか聞いたところ、患者さん本人は思い当たることがない様子でした。
しかし、付き添いで来ていた奥さんが、普段の仕事に加えて同居している義母の介護をしていることや、先日のGWで孫が来てあわただしくしていたことを教えてくれました。この患者さんは真面目な性格の方で、そういったできごとを当たり前のこととして対応していたようです。
漢方は「苓桂朮甘湯」と「甘麦大棗湯」、睡眠剤の「ルネスタ」を処方したところ、二週間後にはすっかり治りました。
医師から一言
この患者さんは、忙しい日常を当たり前のことととらえており、自分自身のストレスに無自覚でした。一緒に来院してくれた奥さんが、患者さんの性格や近況を教えてくれたことで治療の道筋を立てることができました。来院したのが患者さんお一人だけだったら、うまくかみ合わなかったと思います。

50代男性の患者さん
症状・お悩み
ふらつき、高血圧、急に血圧が上がる、蕁麻疹、コロナ感染、コロナ回復後の精神的な辛さ・パニック・気持ちの焦り
治療の流れ
1年前ごろからやや高血圧気味で、ふらつきと蕁麻疹を他院で治療していました。ところが昨日の夜にふらつきがあったので、血圧を測定したら190とかなり高かったためなかたにクリニックに来院。
2021年12月
診察当日に血圧を測定した際も190あり、かなり高い状態でした。血圧が上がった原因は何かを探るためお話を聞いたところ、仕事の人間関係で怒りと不安のストレスを抱えていることがわかりました。血圧をさげるために降圧剤の「ノルバスク」と、心を落ち着かせるために漢方の「柴胡加竜骨牡蛎湯」を処方しました。
2021年12月24日
血圧は140~150ほどまで下がりましたが、まだふらつきがあるということだったので、降圧剤を「ユニシアHD」に変更しました。
2022年1月
血圧は120~130ほどまで下がり、ふらつきもなくなりました。
2022年2月
血圧とふらつきは落ち着いたが、精神面での調子がよいということで、患者さんの要望により引き続き漢方を処方しました
2022年4月4日
コロナに感染
2022年4月13日
コロナの療養から復帰したが、仕事が忙しくて精神的に辛く、パニックになってしまうということで来院。追加で漢方の「半夏厚朴湯」を処方しました。
医師から一言
「血圧が下がればふらつきも少なくなるだろうから漢方は要らないのでは?」と思う方もいるかもしれません。実際、普通の病院であれば降圧剤だけを処方するところが多いと思います。
しかし今までの経験から、降圧剤は血圧の数値を下げることはできても、血圧が突然上がったり下がったりする不安定な状態は解消されないという知見がありました。
この患者さんも大きなストレスを抱えており、それが根元にあってふらつきという症状につながっていました。
また、今回漢方と一緒に降圧剤も処方しているように、西洋薬が治療に適していることもあります。漢方薬と西洋薬、それぞれの長所を掛け合わせた治療を考えていきます。

40代女性の患者さん
症状・お悩み
鬱、冷え性、イライラ、頻尿、残尿感、生理痛、過多月経、寝つきが悪い
治療の流れ
他院の心療内科に10年通っており、漢方や向精神薬(炭酸リチウム)を処方されているが、冷えも鬱も治らなかったため、なかたにクリニックに来院。
2022年2月25日
元々通っていた病院での治療経過を聞きました。今まで服用してた向精神薬をすぐに止めることはせず、まずは漢方の「加味逍遙散」を処方しました。
2022年3月8日
睡眠とお通じが良くなりましたが、まだイライラと頻尿の症状がありました。
症状の原因を探るためにお話を聞いたところ、小学生のお子さんが受験生な上に反抗期で会話がうまくできていないということでした。東方医学でいうところの「肝鬱」の状態であると診断したので、「香蘇散」と「コウジン末」の漢方を追加しました。
2022年3月22日
生理痛と過多月経が良くなりましたが、夜間に物音で目が覚めたり、2時間おきに起きたりするということでした。怒りの肝鬱と診断したので、寝る前に「抑肝散」を服用するよう指示しました。
2022年4月1日
前よりは寝つきがいいけど、まだ疲れて寝にくい状態という事でした。「抑肝散」を「酸棗仁湯」に変更しました。
2022年4月13日
「酸棗仁湯」があまり効かないという事だったので「抑肝散」に戻したところ、寝つきの悪さは解消しました。
2022年5月6日
残尿感と全身の冷えがあるということだったので「附子」を処方しました。
2022年5月20日
「附子」を服用すると冷えに対して1時間は効果があるけど、それ以降は元通りになるという事でした。今回は「附子」と「抑肝散」をやめて、「真武湯」という漢方を追加しました。
2022年5月25日
にこにこした表情で「すべて解決しました!」と大喜びで来院してくれました。
医師から一言
10年という長年の悩みが2か月ほどで解決しました。

70代男性の患者さん
症状・お悩み
下痢っぽい軟便、胃腸炎、左肩が上がらない
治療の流れ
2019年3月
アレルギー性の急性結膜炎で来院。
2020年
インフルエンザワクチン接種で来院。
2021年
コロナワクチン接種で来院。
2021年8月
下痢っぽい軟便が続いており正露丸を飲んでいるということでした。冷えによる下痢・胃腸炎と診断したので、漢方の「人参湯」を処方しました。
2022年2月4日
下痢の症状が再発したため再度来院。普段子どもの見守りをしているそうですが、その最中に嘔吐し、その日の夕方から下痢が続いているということでした。前回処方された漢方が余っていて、それを服用したら効いたということだったので同じものを処方しました。
2022年2月8日
下痢が治ったことで信頼をいただけたようで、今度は左肩が上がらないという相談をうけました。患者さんのお話を聞いたところ、パソコン等のデスクワークや大工等のフィールドワークをしていて、身体に冷えを感じているようでした。この冷えが増悪原因と診断したため、冷えによる神経痛を取る「桂枝加朮附湯」、肩の痛みに使われる「二朮湯」を処方しました。
2022年2月24日
肩が楽になったとのことでした。
2022年3月24日
もう治ってすごく良い感じですとのことでした。
2022年5月26日
体調も良好ということで、薬の処方を終了しました。
「劇的に治って驚きました、ありがとう」という言葉をいただきました。
医師から一言
意外に思われるかもしれませんが、膝・肩・腰など整形外科で扱われるような症状にも漢方は効きます。整形外科というと、痛み止め・湿布・注射・リハビリなどの治療を想起する人が多いかもしれません。
この患者さんの場合は冷えが原因だったので、冷えの神経痛を取る「桂枝加朮附湯」、肩の痛みに使われる「二朮湯」を処方しました。

60代女性の患者さん
症状・お悩み
冷え性、こむら返り、つま先の冷え、首から上の多汗、肩こり、夜間頻尿
治療の流れ
2021年8月
夏でも寝るときにソックスを履くくらい足が冷たいということで、「四逆散」処方しました。
次来た時に「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」を追加で処方しました。
2021年9月1日
身体がほかほかしてきたようです。
2021年10月・11月
調子よく冷えが取れていきました。
2021年12月28日
寒い季節になり、冷えが出てきて足がつるということで、「附子」を追加しました。
2021年1月18日
「附子」を追加しましたが変化はなく、足がつる状態が続いているということで、「桂枝茯苓丸」を追加しました。しかし「桂枝茯苓丸」を追加しても変化はありませんでした。
ただ、漢方が飲みづらいということだったので、この冬は「四逆散」と「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」と「附子」で乗り切ることを決めました。
2022年4月21日
下腹部から下が冷えているということで、「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」を「五積散」に変更しました。
2022年5月12日
処方する漢方を「四逆散」「附子」「苓姜朮甘湯」の組み合わせにしたところ、症状が改善しました。
医師から一言
暖かい季節の冷え性は解消しました。今後の課題としては寒い季節の冷えの解消です。

70代女性の患者さん
症状・お悩み
急な眩暈、ふわふわした感じ
治療の流れ
4月10日
パソコンを見ていたら急に眩暈がしたがすぐおさまったということがありました。
4月15日(初診)
急な眩暈が起きてから、ずっとふわふわした感じが続くようになったということで、なかたにクリニックに来院。近況などのお話を聞いたところ、4月に入ってからお仕事が忙しかったということがわかりました。東方医学でいうところの「気逆」だと診断したため、漢方は「苓桂朮甘湯」「四物湯」を組み合わせた「連珠飲」を処方しました。
4月22日
すっかり治って調子が良くなりました。
また多忙になったら再発する可能性があるので、お守りとして「苓桂朮甘湯」を処方して治療を終了しました。
医師から一言
西洋医学の考え方だと、眩暈の症状であれば耳鼻科系の薬「セファドール」などが処方されるかと思います。
しかし、ふわふわとした感じが続いていることから、症状が起こった原因が多忙のストレスによって起こった「気逆」と診断しました。
眩暈の症状を抑え込むのではなく、症状が起こった原因を改善するための治療を進めました。

70代女性の患者さん
症状・お悩み
一か月くらい吐き気が続く 他院で薬を飲んでいるが治らない
治療の流れ
胃カメラの検査をするため、他院の紹介でなかたにクリニックに来院。
4月12日
胃カメラの検査をしましたが、軽いポリープとびらんが見られるだけで、胃に大きな問題はありませんでした。
この患者さんは他院に通院しており、今回は胃カメラ検査のための来院だったのですが、患者さんが望まれたのでそのまま治療をすることになりました。
東方医学の「脾虚」であると診断したため、「六君子湯」を処方しました。
4月26日
すごく調子がよくなって、食欲も出て、食事も食べられると感激されてました。
医師から一言
胃の状態が悪いのに検査をしても異常がみられないことを、東洋医学的には「脾虚」と言いますが、西洋医学的には「機能性ディスペプシア」と言います。西洋薬が処方されてもなかなか治らず、悩んでいる方は多いです。

70代女性の患者さん
症状・お悩み
歩けないほどの膝の痛み
治療の流れ
2019年2月~
慢性心不全の治療のため、なかたにクリニックに通院していました。
2020年7月31日
この患者さんは活動的な方で、一生懸命身内の介護をされていました。しかし足を使うためか、左膝が痛くて歩けなくなったということで、「防已黄耆湯」と「麻杏薏甘湯」を二週間分処方しました。
2020年9月11日
かなりよくなりました。膝の炎症の再発もなく、もともと活動的だった方ですが、さらに元気になりました。
医師から一言
膝が良くなって元気になられたのは本当に嬉しいことなのですが、心臓に負担がかかるので張り切り過ぎないよう注意しています。笑

20代女性の患者さん
症状・お悩み
しんどい、だるい、息苦しい、下腹部痛、気持ちがどんよりする、喉がつまる、朝吐き気がある、生理前がだるい
治療の流れ
3月23日
3月に入ってから就職活動が本格化し、しんどさを感じていたようです。漢方は「抑肝散加陳皮半夏」と「半夏厚朴湯」を処方しました。
4月1日
まだすっきりしないということで、就活の状況を聞いたところ3月24日に内定をいただいたようです。嬉しいニュースだと思うのですが、患者さんは暗い表情をしていました。
もう少し踏み込んでお話を聞いたところ、コロナや戦争など社会の暗いニュースについて重く受け止めてしまったり、就職の内定はもらったけど入社するのは来年なので不安があったりという事でした。
4月30日
漢方を飲み続けて、気持ちがどんよりすることはなくなりました。しかし、喉がつまって寝にくいことがあるということで、「香蘇散」と「コウジン末」を追加しました。
また、心療内科へ行ってカウンセリングを受けてみることを提案しましたが、前向きな反応は見られませんでした。
5月14日
喉がしんどい、朝吐き気がある、生理前がだるいということでした。心療内科での治療が必要な段階だとお伝えしましたが、心療内科の病院には行きたくないということだったので、抗うつ剤の「ジェイゾロフト」を処方しました。
5月27日
「ジェイゾロフト」が効いたのか、だいぶ状態が良くなっていました。
医師から一言
抗うつ剤を併用することで好転し始めました。ただ、患者さんは漢方のみの治療を希望したので、意志を尊重し、漢方治療を進めていきたいと思います。

10代女性の患者さん
症状・お悩み
虚弱体質、頻繁に風邪をひく、生理痛がひどい、生理不順、PMS
治療の流れ
2016年頃~
頻繁に風邪をひいたり体調不良になったりするので、かかりつけ医として診ていました。
2018年1月19日
虚弱体質気味なので、免疫力と体力を上げるために「補中益気湯」を処方しました。
2018年2月3日
調子がいいと喜んでもらいました。しかし、漢方の薬を飲み続けるのが苦手なようで、その後もたびたび風邪をひいていました。
2020年1月
他院で発達性障害の診断を受けたということです。また、なかたにクリニックで漢方による治療を受けるよう勧められたようです。
この日は生理痛がひどいということでなかたにクリニックに来院。漢方は「加味逍遙散」と「補中益気湯」を処方しました。
2020年2月5日
生理痛もなくなって調子もよくなりました。その後、「補中益気湯」の処方を続けていましたが、次第に薬を服用しなくなりました。
2022年4月30日
PMS(生理前に心身の調子が悪くなる症状)で困っているということで来院。処方した漢方は「加味逍遙散」と「補中益気湯」。今回はちゃんと漢方で治したいという本人の意志も出てきて、治療を続けていくことになりました。
医師から一言
この患者さんは十代前半では薬の服用を続けられませんでしたが、十代後半になり自分の意志で薬の服用と治療の継続を望むようになりました。かかりつけ医として長年診てきましたが、患者さんの成長を感じています。

40代女性の患者さん
症状・お悩み
手術後から続く右足の痺れ、冷え、起床時の足のむくみ、しんどさ、イライラ、不安、
治療の流れ
2021年11月13日
3年前に腰椎椎間板ヘルニアを手術して、それから右足の痺れが続いているということでした。また、一週間前から右足首からふくらはぎの外側に冷えと痺れを強く感じるということでなかたにクリニックに来院。他には、起床時に右足全体がむくんでいるということでした。
漢方医学でいうところの「瘀血(おけつ)」だと診断したため、「桂枝茯苓丸加薏苡仁」と「牛車腎気丸」を処方しました。
2021年11月26日
しんどさと痺れは治り、冷えも一度治ったがまた出てきたということでした。近況を伺ったところ、旦那さんが亡くなり、義理の家族とうまくいっていないということがわかり、自分の将来と家族関係に不安とストレスを抱いているようでした。
この患者さんは当初足の痺れの治療を望んでいましたが、今回精神面の治療を望まれました。
実際に負の感情が諸症状を悪化させていると判断したので、漢方を「加味逍遙散」と「四物湯」に変更しました。
2021年12月10日
メンタルの方は少し持ち直したが、足の痺れがまたぶり返したということでした。患者さんは足の痺れと精神面、両方を同時に治療することを望まれました。
しかし、漢方は3つまでしか出せません。この制限がある以上、どちらか片方を先に治療する必要があるとお伝えしました。患者さんが、足の痺れを先に治療したいと希望されたため、「大防風湯」「桂枝茯苓丸」「疎経活血湯」を処方しました。
2021年12月24日
足の痺れが楽になったという事でした。ただイライラがでてきたということでした。
2022年1月21日
この時点で足腰は大丈夫とおっしゃるので、「附子」を処方しました。
2022年2月18日
足の痺れは改善し、精神面も調子が良くなったということでした。
医師から一言
この患者さんは足の痺れと精神面、大きく二つの治療が必要でした。最初は、こっちが立てばあっちが立たず、あっちが立てばこっちが立たずのシーソーゲーム状態がつづきました。しかし患者さんの意志を尊重し、足の痺れの治療に専念することで、結果的に両方とも改善に向かいました。痺れがもたらす不快感が解消され、心にゆとりができたのではないかと思います。そして足の痺れという問題が一つ解決したことで、前向きな気持ちを取り戻したように見えます。
※漢方の効き目は、患者様の体質・症状の重さ・生活環境等によって個人差があります。