MEDICAL
漢方治療エピソード
漢方治療エピソード その1
70代女性
症状・お悩み
高血圧 眩暈 耳鳴り ぼーっとする 眠気がある だるい 便秘
治療の流れ
この患者さまの娘さまがもともとなかたにクリニックに通っており、娘さんの紹介で来てくれました。それからは、めまいや耳鳴りなどの症状に対して漢方による治療を進めていました。
これはその患者さまがコロナに罹患した時のお話です。熱はないけど倦怠感があったため漢方の「補中益気湯」を処方しました。倦怠感がおさまった後、「血圧が上がったり眠気が出たりするからなんとかしてほしい」とやや興奮気味におっしゃるので血圧のお薬を処方しました。しかしその後も血圧が高くなったり低くなったりはおさまらず…
この時私が感じていたのは、この患者さまは周囲の事に意識が行きがちなところがあるということです。自身がコロナにかかったことの不安に加え、家族など周りの人たちへの心配などもあり、気が立っているように見えました。そこで正直に「他人の話に首を突っ込みすぎではありませんか?周りのことを気にするよりも、まずは自分の足元を見て落ち着いてください。今の状態でお薬を出しても意味がないので、お薬は飲まずに様子をみましょう。」とお伝えしました。
約1か月後、表情をみると別人のようにすっきりとしているのが見てわかりました。患者さま曰く、「先生に言われたことが衝撃だった」「周りとの折り合いも良くなって楽になった」とのことで、体調的にも精神的にも落ち着いたようでした。
今でも漢方を少量処方していますが、これは「お守り」のようなもので、習慣的に薬を飲まなくてもよい状態になりました。
医師から一言
「自分を変えれば周りも変わる」ということを改めて実感したエピソードでした。他人のことを気にしたりまだ起こっていない未来に怯えたりすることで、自分自身を追い込んでしまう方が多くいます。これでは体調不良を自ら招いているようなものです。患者さま自身がこのことに気が付くことが回復へ向かうきっかけになります。
漢方治療エピソード その2
20代男性
症状・お悩み
発熱 頭痛 咽頭痛 倦怠感、39度の熱 コロナの疑い
治療の流れ
初診日(夜診)
高熱が出ていたのでなかたにクリニックで検査をしたところ、新型コロナウイルス感染症の陽性が認められました。この患者さまは20代と若い方で、高熱のわりに汗があまり出ていなかったので、発汗療法をすることにしました。発汗療法とは免疫力を高めるために発汗を促す治療方法のことです。
(発熱・発汗は免疫力を高めようとする身体の反応です。高熱が出たときはよく解熱剤をつかうイメージがあるかもしれませんが、場合によっては逆効果になることがあります。)
発汗を促すために「大青竜湯」を処方し、2~3時間おきに飲むよう指示しました。
1日目(翌日)
朝に電話で体調を伺うと、もう熱は36.8℃まで下がってだいぶ楽な状態になっていました。喉の痛みがあるとのことだったので「小柴胡湯加桔梗石膏」を処方しました。
3日目
喉の痛みと微熱、関節痛に効く「桂麻各半湯」を処方しました。
4日目
症状はかなり落ち着いており、喉の痛みと倦怠感がまだ残っていたので、「補中益気湯」と「桔梗石膏」の漢方を処方しました。
漢方を服用するのが初めてだった患者さまでしたが、おかげさまで楽になりましたと感謝の言葉をいただきました。
医師から一言
症状が同じ患者さまであっても年齢や体力を考慮した結果、違う漢方を処方することがあります。また、治療経過によって漢方を変えることもあります。
漢方治療エピソード その3
40代女性
症状・お悩み
喉が詰まる 息苦しさ どの病院に行けばいいかわからない
治療の流れ
「喉が詰まる、息苦しさ」という症状に対して、どこの病院に行けばいいのかわからず、耳鼻科や内科など複数の病院を転々としていたようです。病院で診てもらっても一時的に症状が良くなったり悪くなったりの繰り返しで、病院に対し疑心暗鬼になっていました。もしかしたら食道ガンなど大きな病気なのかもしれないという不安もあり、人に勧められてなかたにクリニックに来院。
この患者さまを見たとき、東洋医学的な病態である「気鬱」の症状だと推察しました。「気鬱」とは気(エネルギー)が体内をスムーズに巡らずに滞ることで様々な不調が現れる病態です。その主な原因はストレスだと言われています。
患者さまへのヒアリングを進めていくと、最近離婚裁判で悩んでいることが判明しました。裁判や仕事、これから先の人生に対する不安などのストレスを抱えており、そのストレスが「気鬱」の症状につながっていました。
患者さまは病名と原因がわかったことで安心した表情になり、「半夏厚朴湯」と「桂枝加竜骨牡蛎湯」の漢方を処方してからはみるみる顔色が良くなっていきました。
医師から一言
患者さまの明るい表情と、「どこにいっても良くならなかった症状が、おかげさまで楽になりました」とお言葉をいただけたことが強く印象に残っています。